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交流整流子電動機は何故鉄道で使われなかったか

ハイレベル鉄道技術講座(仮)
~ネットになかなか載っていない鉄道技術~

第一回 交流整流子電動機は何故鉄道で使われなかったか

※画像を付けたいのですが、諸般の事情によりいつになるか分かりません。

ご注意
このシリーズは、電磁気や電気の知識がないと完全には理解できないかもしれませんが、これは仕様です。


 日本の鉄道に交流電化が導入されたとき、当然、交流電気機関車が開発されました。このとき試作れたのが、ED44 1と、ED45 1でした。


ED44 1
交流電流にて交流整流子電動機(直巻電動機)を駆動。
制御方法は変圧器タップ制御。

ED45 1
水銀整流器により交流を直流に変換し、直流整流子電動機(直巻電動機)を駆動。
制御方法は変圧器タップ制御+水銀整流器による位相制御。


 試験の結果、ED44 1のほうが電動機の消費電力が大きいにもかかわらず、ED44 1は、起動加速度、勾配・平坦における引き出し能力など、様々な点でED45 1に劣っていました。しかも、ED44 1は1運用ごとに整流子を磨かなければならず、極端に手間がかかることがわかりました。結果、ED45 1で用いた整流器+直流電動機という組み合わせが、VVVFインバータが登場するまで交流電気機関車の構造として受け継がれることになりました。

 では、なぜ、ED44は欠点だらけになったしまったのでしょう。使用した電動機は、ED45と同じ直巻電動機であったはずなのに。もちろん、ED45の位相制御による電動機の連続制御は、ED44に比べて非常に優れた点ではありました。連続制御であれば、空転しづらく、引き出し能力も高められるのです。しかし、後に水銀整流器が壊れやすいためにシリコンダイオードに置き換えられても、やはり整流器+直流電動機の構造のほうが優れていました。これはなぜなのでしょう。


 交流整流子電動機の欠点の原因は、変圧器起電力と、電流に対する磁束の遅れが原因で、整流悪化が生じるためです。

変圧器起電力とは



 変圧器起電力とは、交流電流を流しているときに、界磁コイルと電機子コイルが変圧器の働きをして、電機子コイルに電圧が発生する現象です。界磁コイルにsin(2πft)の電流を流すと、電機子コイルには2πf・cos(2πft)に比例する電圧が生じます。fは電源周波数です。
 整流子電動機が回転すると、整流子の上をブラシが滑るわけですが、ブラシが隣り合う整流子の接点同士を短絡する瞬間があります。このとき、そこに繋がる電機子コイルの1つが短絡されます。交流整流子電動機では、電機子コイルには、変圧器起電力が生じているので、その起電力を短絡してしまい、短絡電流が流れることになります。従って、整流子とブラシの間で火花が生じるわけです。このように火花が生じることを、整流悪化と呼びます。しかも、ブラシが短絡するときは、電機子コイルが界磁コイルに接近しており、変圧器起電力は大きくなっています。このような短絡電流は、無駄に電力が消費されるので、出力の低下にも繋がってしまいます。

電流に対する磁束の遅れとは



 また、導電体鉄心に巻かれたコイルに交流電流を流すと、生じる磁束は電流に対して遅れます。鉄心には電流が流れることができるので、鉄心は短絡されたコイルと見ることができます。従って、鉄心にコイルを巻くと、2次側が短絡された変圧器と見ることができます。コイルに交流電流を流せば、鉄心に電流が生じます。これは渦電流と呼ばれます。
 この渦電流も、無駄に電力を消費するのでよくありませんが、もっと問題があります。渦電流は、コイルが発生する磁束の変化を妨げるように生じます。よって、鉄心に巻かれたコイルから生じる磁束は、コイル電流に対して遅れてしまいます。これは、補極の効果を下げてしまいまい、清流悪化につながります。

補極とは
 補極について説明しておきましょう。電動機は、直流、交流にかかわらず、逆起電力が生じています。整流子電動機であれば、これは電機子コイルからも生じるわけです。もし、変圧器起電力のときと同じように、この起電力をブラシが短絡してしまうと、整流悪化となります。ブラシが短絡する電機子コイルは、界磁コイルにもっとも接近しています。よって、単純に考えれば、ブラシが短絡する電機子コイルが受ける磁束の変化は0で、起電力は生じていないように見えます。しかし、実際には、電機子コイルの磁束と界磁コイルの磁束が合成されて、磁束の変化が0になる点はずれています。よって、ブラシは逆起電力の一部を短絡することになり、これも整流悪化につながります。
 補極は、界磁コイルと90°の位置に設けられたコイルです。補極による磁束によって、電機子コイルが受ける磁束の変化が0になる点を、ブラシが電機子を短絡する点に合うように補正して、整流悪化を防ぎます。

 話を戻しましょう。
 電流に対する磁束の遅れは、界磁コイル、電機子コイル、そして補極の間でまちまちです。よって、磁束のバランスが崩れて、電機子コイルが受ける磁束の変化が0になる点を補極によって補正することができなくなります。そして、整流悪化になってしまいます。

まとめ



 以上により、交流整流子電動機は整流悪化という大問題があることがわかりました。つまり、火花により整流子とブラシがすぐに摩耗し、短絡電流により無駄な電力消費が起こり、同じ電力をつぎ込んでも、直流整流子電動機より低い出力しか得られないことになります。ですから、電気機関車という大出力用途ではまともに使えなかったわけです。
 また、ED45のように整流器を用いた場合でも、整流後の波形が脈打っているとその交流成分より整流悪化が生じます。よって、平滑リアクトルを用いて、整流後の波形を直流に近づけることが必要になります。 なお、変圧器起電力は、周波数に比例する大きさで発生します。また、電流に対する磁束の遅れは、周波数が高いほど大きくなります。ヨーロッパで低周波交流(25Hzや50/3Hz)による交流電化が行われているのはこのためです。
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